にょたパロ・文仙
(仙蔵が女の子)



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「邪魔するぞ」

宣言するだけ宣言して、此方が返答するまもなくドアを開け放ったのは隣に住む幼馴染の仙蔵だった。
仙蔵は呆けている文次郎をよそに、勝手に部屋に上がりこむと持参したお菓子を食べ始める。その姿に溜息をつかずにはいれなかった。

時刻は夜の九時。若い男女がこんな時間に部屋に二人きりなんて、普通に考えてもおかしいのに、仙蔵本人も互いの両親も了承しているのは、二人が婚約関係にあるからに他ならなかった。将来結婚する相手だからと、文次郎の親もこうやって仙蔵を招きいれてしまうし、仙蔵の親だって送り出してしまうのだからとんでもない話だ。
部屋に来るのはかまわないが、時間だけは考えて欲しかった。
文次郎とて、聖人君子ではない。年頃の男だ。
恋焦がれる相手と同じ空間で、しかも二人きりで過ごして平静を保っていられるほど大人でもなければ出来た人間でもない。昼間の明るい日が射す中ならまだしも、こんなもう寝るだけぐらいの時間に来るのだけは勘弁して欲しかった。

先程まで意識を向けていたノートから目を離して仙蔵を盗み見る。本日の服装は黒とグレーのボーダーのニットチュニックとレースのスカートを合わせていて非常に女の子らしい姿だった。
先週も部屋に乗り込んでくることはあったけれど、そのときの服装はパンツ姿が殆どで、酷いときは中学時代の見慣れたジャージだった。その時は色気もそっけもない格好だったから、特に意識することも無かったけれど、今日のように「女の子」を意識させる姿は若い体には目に毒でしかない。
あまり見ていると本当に変な気が起きそうで、慌ててノートへと目を移す。参考書の文字を追うのに、その内容はさっぱり頭に入ってこなかった。

あー、もう!

どうせやってることは予習だ。やってもやらなくても授業に特別酷い弊害をもたらすわけでもないと、ノートも参考書も閉じて所定の場所へとしまいこんだ。そうして勉強机から離れて、仙蔵の傍へと腰を下ろした。

「なんだ?もう終わりか?」
「…ああ」

貴女がいたらとてもじゃないが、集中なんて出来ません。
…とは言えないので、そのままスルーして仙蔵の持ってきた菓子へと手を伸ばした。
文次郎は甘いものがそう得意ではないけれど、仙蔵の持ってきたものはしょうゆ味の煎餅で、場の気まずさも手伝ってなんとなく手に取ってしまった。隣に座る彼女は涼しい顔をして、煎餅を頬張っている。その横顔に、変な意識をしているのが自分だけのような気がして、ますます居た堪れない気持ちになった。










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2010/10/18〜2010/11/1
(拍手短文)



悶々とする文次郎が書きたかった。
そして続きをど忘れした…(オイ)
短文ですみません



title:確かに恋だった



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